私はこれで優等生やめました

「おじいちゃん!僕、おじいちゃんのことが一番好きなんだ!だから大きくなったら僕と結婚してくれる?」
「おお、勿論良いとも、承太郎」

思えば幼い俺は、相当に純粋培養だったのだろうと思う。
「結婚すればずっと一緒にいられる」と母に聞き、俺がプロポーズを思い立ったのは、わずか3歳のときだった。
物心ついたときから一番大好きだった祖父は、普段は違う国に住んでいて、一年に会えるのは数えるほどで。
だから俺は結婚すればずっと祖父と一緒にいられると考え、プロポーズに及んだのだ。
そんな孫の幼いが故の勘違いを、祖父はあからさまに正したりはせず、笑って了承してくれた。
恐らく成長していくうちに、自然に間違いに気づくとでも思ったのだろう。
しかし、俺はその後数年間、その口約束を本気で信じていたのだ。
それが間違いであることを知ったのは、何かのはずみで、母にそのことを話したのが切っ掛けだった。

「あら承太郎、知らないの?おじいちゃんと孫は、どんなに好きでも結婚はできないのよ?それにおじいちゃんはもう、スージーQおばあちゃんと結婚しているの―――重婚はダメよ!結婚するんならママにしなさい」

自分も同じ条件下のくせに、そんなことをぬけぬけとぬかしたばばあもばばあだが。
その頃まで本気でガキの頃の約束を信じていた俺は、ばばあの言葉にはっきりいってメガトン級のショックをうけ、絶望した。
そして。

「…え?それがキミがぐれた切っ掛け?」
「ああ」

花京院は目をぱちぱちとさせると、微妙にひきつった笑みを浮かべてこういった。

 

「…キミってなんというか、本当にとことんだったんだねえ」

 

そこのけ、そこのけ、ジジコンが通る

ある日ジョセフがアレッシーの影を踏んでしまい、わずか10歳くらいの子供になってしまいました。

「うわ〜、ジョースターさん、可愛い^^」
「承太郎の子供になったときと、本当にそっくりだな」
「年を取るってのは、残酷だよなあ…」
「…これこれ、おまえたち」

もはや定番の展開なので、アレッシーをとっとととっ捕まえ、縄でぐるぐる巻きにしたスタクル一向は、やつを凹って術を解かせる前に、幼いジョセフの姿をしげしげと堪能するくらいの余裕があった。
けれどガキンチョの姿になったジョセフを見て、承太郎の反応だけはなんか他とは違っていた。
彼はアレッシーに詰め寄ると、突然こんなことを言ったのだ。

 

「馬鹿野郎!じじいはじじいだからこそ、萌えなんだよ!―――なんでじじいのまま、ショタにしなかったんだ!!」

 

「…承太郎、さすがにそれはマニアックすぎると思うよ」
沈黙する一行を代表して、花京院がつぶやいた。

ケダモノだもの

 

ある日ジョセフに何でか、猫のような耳としっぽが生えてしまいました。

「うわ〜、なんじゃそりゃ。どっかのエロ同人のような姿じゃねえか」
「モロですねえ」
「二人とも何をいってるんだ?」
「うう、おまえたちならともかく(←待て)、なんで年寄りのわしが今更こんな目に(涙目)」

スタクル一行は反応はそれぞれ違えど、その事態に困惑した。仮にスタンド使いの仕業だとして、獣の耳としっぽを生えさせて、何の得があるというのか。
けれど獣耳、しっぽつきの姿になったジョセフを見て、承太郎の反応だけはなんか他とは違っていた。
彼はがっしりとジョセフの両肩をつかむと、こんなことを言ったのだ。

 

「よおし、じじい、俺にはわかっていたぜ―――これがてめえの本当の姿だな!」

 

「「「「………………はあ?」」」」

あまりに斜め上の反応に、メンバーは全員、理解が遅れた。
「大丈夫だじじい、安心しろ!こんなこともあろうかと、ブラシと猫じゃらしはすでに買ってある!俺がてめえを守ってやるからな!」
そういって抱きしめてくる承太郎に、ジョセフは抱き返すことも出来ず、白目をむく寸前のような顔をしている。
そりゃそうだろ。
普段からじじこんだとは思っていたが、まさかこんなこじれた男だったとは。

「…全然、安心できない感じだね」
「普通なら、孫から祖父への嬉しい言葉なはずなのに…ジョースターさん、気を失う寸前だな」
「承太郎のあの反応―――まさか、ジョースターさん、本当にあれが本来の姿なのか?」
じじこんをこじらせた男の言葉を、真に受けたまさかの人間がここにいて、花京院とポルナレフは、ちょっと遠い目になった。

「ところでこの猫耳としっぽ、触っても良いか?―――まあダメといっても触るがな」
「ちょっ!承太郎、ひゃうっ!///」
「おっと…この耳、ぴくぴく震えてるぜ。可愛いな」
「…やめっ!!//」
「クク…しっぽのほうはどうかな?ホテルでよおく確認させてもらおうか」

そういって力の抜けたジョセフを腕に抱き上げて歩き出した承太郎を見て、花京院たちは焦った。
これは間違いなく、ホテルに連れ込み、いろいろされちゃうパターンだろう。
下手をすれば「動物には首輪が必要だな」なんて言って、監禁フラグとかも立っちゃうかもしれない(今の承太郎ならやりかねない)
なんとか止めなければ!と焦った一行(※約一名の天然は事態をわかってない)の願いを、神は聞き届けてくれた。

 

「はは―――!!!!どうだジョースター、その姿ではスタンドは使えまい!!!!」

 

「「ああ!」」

突然現れた、今回の事態の黒幕だと思われるスタンド使いの言葉に、ポルナレフと花京院は、思わずぽんと手を叩いた。
あまりにエロ同人的な展開に、確認するのをすっかり忘れていたが、なるほどこれはスタンドを使えないようにするためだったのか。
もっともジョセフのスタンドそのものは、一応攻撃性を持たないものなので(攻撃に使えないわけではないが)、将来的に旅で困ることはあっても、今はあまり意味のないことかもしれないが。

「おまえらも同じように、スタンドを使えなく――――げぼおっっ!!!!!!」

最後まで言う前に、名前すら名乗ってないスタンド使いは、承太郎のスタープラチナによって、文字通りふっとばされ、★となった。
その様子を唖然と見ていた一行だったが、花京院ははっと気づく。
承太郎はすでに再び歩き出していて、その腕の中でじたばたともがいているジョセフの姿は、相変わらず変わっていない。
つまり。

「まずいよ!あいつに術を解かせないと、ジョースターさんはあのままだ!!」
「いいいっっ!?―――どこ飛んでったんだ、あいつっっ!!???」

花京院とポルナレフは、あわててスタンド使いを追って走りだし、アヴドゥルが良くわからない表情で、とりあえずその後を追う。
一行のスタンド使い探索は、その日、深夜まで続き(※承太郎が情け容赦なく、遠方まで吹っ飛ばしたため)、やっと捕まえて術を解かせて戻ったホテルには、ぐったりと疲れ切ってベッドに沈没したジョセフと、やけにつやつやして満足げな顔をした承太郎がいたという。

 

恋は盲目っていうけれど、それを通りこしてる場合はどうすれば良いんだろう?

 

それは暇にあかしたちょっとした雑談のはずだった。

「承太郎がジョースターさんのこと、『そういうふうに好き』って自覚したのは、いつのこと?」
「ん〜、高1の頃かな。ちょうどメイド喫茶が出始めて、テレビでやってて」
「うん…?」
「…じじいにメイド服着せて、エロいことしてえって思った」

 

「……………思ってたよりキミって、重症なんだね」

 

宿命の対決

「フハハハハハ!!!良くここまで来たな、ジョセフ、承太郎!!貴様らの命はこのディオが―――ひでぶっっっ!!!」

前口上の途中で、いきなり承太郎のスタープラチナにグーで殴られたディオは、床に倒れこみ、唖然として承太郎を見上げた。
承太郎はいつものゴゴゴゴゴ…という効果音をたてつつ、ディオを見下ろしている。
「てめえ、じじいを『名前呼び』とはいい度胸だ―――俺でさえ、まだ呼べてねえのに」
「……………はあ?」
承太郎の言葉の意味が一瞬わからず(そりゃそうだろ)、呆気にとられたように返したディオは、続いて襟首を掴まれ、言われた台詞に、さらに意識が遠くなった。

「まあそれは後できっちり話をつけるとして―――まずはじじいの隠し撮り写真を、全部出しな」
「は?隠し撮り?」
「てめえがハーミットで、度々じじいを隠し撮りしてたのは知っている―――だからそれを全部出せってんだよ!」
「…ちょおっと待て。それではまるで私が変質者か何かのようではないか?」
「変質者というよりは痴漢だぜ。じじいが艶っぽいからって、隠し撮りしてやがったんだろう、厭らしいやつだ―――だがじじいは俺のもんだ。当然そのお宝写真の所有権は俺にある!!」
「ドヤ顔で言われても知らんわ、そんなことっ!ていうか、お宝写真ってなんだああっっ!!??」
「やかましいっっ!!さっさと出さねえと、死んだ方がマシって目にあわせるぞ!!!!(超悪人面)」
「 WRYYYYYYYYYY―――ッッッ!!!!(涙目)」

「…なんかわし、最近たまに、孫のことが良くわからなくなるんじゃ」
「…心配せずとも正常な反応ですよ、ジョースターさん」

敵の本拠地に攻め入り、いよいよ宿命の対決が―――というときになってはじまった、明らかにかみ合ってないと思われるやり取りに、一行はひたすら遠い目になるのだった。

 

リア充はここにいる

 

「ああ言うのって『リア充爆発しろ』というんじゃろ?」

それは旅のふとした合間。少し離れた場所で戯れるカップルを見て、ジョセフが不意にいった。
承太郎はそれに目を瞬き、思わず尋ねる。
「…意味分かっていってんのか?」
「無論じゃ!REALとFULLを組み合わせた、若者のスラングじゃろ?日本の若者は面白いことを考えるのぉ」
楽しげに笑うジョセフに、承太郎は思わず苦虫をかみつぶしたような顔になる。なんでも面白がる祖父にこんなくだらないことを吹き込んだのは、間違いなく友人の花京院だろう。
あとでひとこと言ってやらなければ。

「面白いってか、使うやつの妬み嫉みがモロに出た言葉って気がするがな」

承太郎は基本的に、他人に羨望を抱いたり、妬んだりといった感情をあまり持たない。
それはそれだけ恵まれており、何不自由なく育ってきた証拠ともいえるが、それ故に承太郎にはそんな言葉を思いつく若者の思考を「面白い」というより「くだらない」と思ってしまう。
けれど祖父は違うようだ。

何にでも興味を示し面白がるこの祖父に、承太郎はたまに辟易するし、年甲斐がないと思わないこともない。
けれどそれは裏を返せば、それだけ間口が広く、柔軟でしなやかな精神の持ち主だと言い換えることも出来るのだ。
それは常人には生半なことでは持ちえない、明らかな”長所”だ。
もっともそれを口に出せばこの祖父のこと、際限なく調子にのるだろうから、口には出さないが。

「まあ、おまえはわしの孫だけあって、体格面でも、頭脳面でも、随分と恵まれておるしな―――その上、あちらの血が入っておるから、その容姿じゃ。女にはモテモテじゃろうし、そんなふうに他人をやっかむ連中の気持ちなどわかるまいて」

からかうような口調に、承太郎はムッとする。そのときの感情を言葉にするなら、「人の気も知らねえで」、だ。
「…別に、俺だって他人をやっかんで、どいつもこいつも死んじまえと思ったことくらいはあるぜ」
「ほーお?おまえさんがなあ」
まるで信じていないように笑う祖父に、承太郎はため息をついて言った。

「だが今は必要ねえだろ?一番側にいて欲しいどっかの薄情もんが、ロクに顔を出さなくなった1、2年前ならともかく。今そいつは朝から晩まで俺の側にいる―――誰をやっかめって言うんだ?」
「っっ!!!///」

カッと頬を赤らめた祖父は、珍しくも承太郎の口説き文句を曲解せずに受け止めたようで、承太郎の機嫌は急浮上する。
自分にだって、人並みの妬みや嫉みはあるのだ。
ただそれは、ただ一人が絡んだときにのみ、限定して動く感情なだけで。

「じじいが側にいれば、俺はずっとリア充なんだがな?」
「…!!!///」

肩を抱いてそうささやくと、真っ赤になった祖父が顔をそらして、困ったような顔をする。
はっきりと「好き」だの「愛してる」だの口にすれば、彼は「血のつながり」を理由に拒んだだろうが、承太郎はそれがわかっていて、毎度「肉親の愛情」と錯覚できるスレスレの言葉で口説いている。
そのせいで祖父は、拒めば良いのか、受け入れれば良いのか、わからないのだ。
珍しくも自らの試みがうまくいって承太郎は上機嫌だった。
それに赤くなって困惑する祖父は、たまらなく魅惑的だ。
(これをほおっておくなんて、据え膳も過ぎるだろう?)
承太郎は手を伸ばして祖父の顎に指をかけると、半ば強引に唇をあわせた。

「リア充、爆発しろ」

二人の様子を少し離れた場所から見ていた花京院が、眉間に青筋を浮かべてそうつぶやいたのを見てしまったのは、偶然近くにいた蒼ざめたポルナレフだけだった。

  

  

 

おわり


なんかおかしなジジコン太郎さんがかきたくて、衝動のままに書いた連作^^;
まあ私の書く太郎は今のほうが、ずっとやばい方向にこじれているけどね

H26..9.27(ピクシブより移動)

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